元祖フィールドワーカーの神トークにトリハダ!な話し。・・・20170811fri.@京町家ギャラリーHAPS

彼の活動は気になっていた。(*1)
京都に来る!とのニュースを拾い、自転車を走らせた。

プロフェサーN(*2)、人類学・民族考古学者。台湾の「原住民族」(地元での呼称)をテーマに、二十数年来フィールドワークをされている。愛称「のばやん」。

今回、彼の膨大な研究活動の、一端が披露された。
正座と体育座り(!)で30名も入るといっぱいとなる、真夏の京町家でのトークライブ(*3)は彼にとっても珍しい体験だったに違いない。

タタミにぎっしり、身動きも難しい中、トークに惹きこまれ全員が集中

*  *  *

①神ポイント1「フィールドワークがヤバイ」

シゴト柄、私も「フィールドワーク」をする。範囲や深さはプロジェクトによっていろいろ。
それの本家本元の説得力に、ショックを受けた。

大学で学生さんに「手描きメモが大事」と推奨する。
「身体測(*4)」をしてもらってもいる。

、、、それの、のばやんの実績の、説得力、たるや。

私もそんな、「伝える力」を持ちたい。と、憧憬。(これは「伝え方」よりも、「背景(実経験)」に背うところ大、なんだろう。だとすれば一朝一夕のものではないけれど。)

本家フィールドワーカー?のフィールドノート。なぜ手描きか?臨場感ある解説にドキドキ

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②神ポイント2「トークがヤバイ」

ゲストスピーカーながら、自然に場を回してしまうコミュ力。
ふだん、みんぱく(*5)のトークイベントなどにやってくる参加者さんとは少々ブレンド具合が異色だったのでは?と想像される今回の受講者。(リアル猟師さんとか、アーティストとか~)
トークの守備範囲がめちゃめちゃ広い。話題という意味でも、語学(日、台、英)という意味でも、老若男女という意味でも、笑かしポイントも押さえてるで!という意味でも、遅れて到着する参加者(←私だ、失礼)に、トークを途切らせることなくアイコンタクトとスマイルで迎え入れる余裕と心配り、という意味でも。

なんつー柔軟性と包容力、パラレル処理能力。ノーミソどうなってるんや!と、唖然。

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③神ポイント3「プレゼンがヤバイ」

当然と言えば当然だが、PPT資料のクオリティがハンパない。
過不足ない。(言い方アレですが、これって難しい。)

展開のスピードや、内容の濃度や、途中で他の登壇者に関わるスライドが出てくると話しを振って同席者の魅力を引き出したり。
要所要所にビジュアルのデータが組み込まれた学術的なロジックの積み重ねが(これまた至極当然ですが)めちゃめちゃに納得させられる。
適切なステップって、こんなに小気味がよいのだ!と、感動。

図には英語のキャプション。論文に使ったんだろうな~

*  *  *

、、、私が「学術オンチ」なのかもしれないけれど。
アカデミックなプレゼンを(ほぼ)知らないせいかもしれないけれど。

、、、思えば、このトークイベントは、アーチスト含め「学術発表」を聴きにきたわけではない人々に対し、自分の「本気フィールド」を題材として、膨大で深い知見の中から、大事な部分をわかりやすく伝える、という、図らずも「とてもゼイタクな」仕立てだったのかもしれない。

のばやんの今回のトークが衝撃的にオモシロカッタから、と言って、のばやんの(例えば)学会発表があったとして、私が聴いてもこれほど楽しめないのかもしれない。

深いことを、わかりやすく。

昨日のような場だったからこその、「神トーク」「神ダイアローグ」だったのかもしれない。

トーク中も、質疑タイムも、終わってからも、常に姿勢が開かれたのばやんの周りでは、知的で尊敬に満ちた対話が次から次へと自然に生まれていた。

うーんんん。オソルベシ、プロフェサーN。
そしてホンマありがとう~!!

■補足

*1
台湾(※)をフィールドにされている点、こどものころに行ってショーゲキを受けた「みんぱくのナカのヒト」という点、シゴト柄自分なりに実践しているフィールドワークの本流であろう点、ダイスキな太郎ちゃん(←岡本太郎氏)が一時期絵筆を置いて文化人類学を本格的に学んでいた点、などなどから気になっていた。
なかでもデザインのプロセスで行う「エスノグラフィー」の本家本元である。エスノだよ?エスノ。

▼「エスノグラフィー」の簡潔な解説(コトバンク)
https://kotobank.jp/word/%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%8E%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%BC-444914

エスノグラフィーの初心者向けに、のばやんが教えてくれた本

※参考)2017年6月に参加、路上観察から始まる台日合同ワークショップの様子。台湾マイブーム、マイラブ。(↓ブログにまとめてます)
https://mlog.link-cd.jp/20170628-168.html

*2
野林厚志氏。国立民族学博物館 学術資源研究開発センター・教授。専門分野:人類学、民族考古学、台湾研究。愛称「のばやん」。
http://www.minpaku.ac.jp/museum/showcase/staff/nobayashi/index

*3
東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)主催、ALLNIGHT HAPS 2017 前期「日々のたくわえ」展関連イベント。ゲストトーク「狩猟の民族考古学 —台湾のイノシシ猟から—」。
http://kyoto-artbox.jp/event/33326/

HAPSギャラリー。期間中 夜通し前面ガラスに作品が投影される

*4
身体測(しんたいそく)・・・歩幅や指の長さ、身体の各部位の高さなどを使って、モノや空間の長さ、大きさ、広さなどを測ること、、、と、理解していたんだけど、ググっても出てこない??一般的な用語ではないのかな~?汗。

*5
みんぱく・・・国立民族学博物館のこと。「みんぱく」と言えば万博公園のアレだよね?私、オセアニアコーナーが好き~♪!と親しみを込めてこう呼ぶ。(もっとアクセスがよければなあ~!)
http://www.minpaku.ac.jp/

■追記

台湾原住民のファミリーとともに寝起きし、イノシシを追い山野を巡る、長年に渡るフィールドワーク、研究活動。野林氏にとって数多ある(あったであろう)選択肢の中でなぜこれだったのか?(当初は70歳を超えるベテランの狩人について行くのもやっとだったという。)自身を動かす推進力の泉となる、大きな動機のカタマリ(マグマ溜まりのような)がないと続くわけがない。トーク終了後、ソボクな疑問を投げかけてみたら、「高校でアーチェリーやってたこと、大きいと思うよ」とのこと(!)。ビックリ。そしてなんだかウレシイ。こんな風に花咲くのか、、、!